「これも遺伝子治療の対象になるのだろうか」と考えさせられるものに″老化と寿命″に関係する遺伝子がある。
寿命決定遺伝子はあるかヒトはもちろん、生物すべてにとって「なぜ老化するのか。
そもそも老化とは何なのか。
いったい生物の寿命は誰が決めているのか」は、じつに素朴かつ大きな問題だから、細胞や遺伝子の研究者で疑問と興味をもたない人はいないはずである。
たとえば、こんな実験がある。
ヒトの胎児の細胞をシャーレなどの培養器に入れて、上手に栄養やホルモンを与えて環境を作ってやると、何度も分裂・増殖を繰り返して容器の底いっぱいに広がる。
ところが、50~60回ほど分裂を繰り返したところで、なぜか増殖がストップして分裂が進まなくなる。
まるでテレホンカードを使いきったかのように、突然、細胞が分裂をやめてしまうのである。
これは1960年代にアメリカで発見された現象で、そのあと何人もの研究者が胎児などの細胞で実験を行っているが、同じように50回ほどで分裂がストップしてしまうケースが多い。
胎児ではなく年齢の高い成人から取り出した細胞では、それまでに分裂した回数が多いせいだろう、培養器に移してからの分裂は早く止まってしまう。
さまざまな動物の細胞で実験してみると、他の種類にくらべて長命の動物では分裂の回数が多く、短命動物では分裂回数が少ない傾向があるのもわかった。
こんなことから、「細胞が自分の分裂回数をカウントダウンしていて、ゼロになった細胞部分から機能のダウンがはじまる。
これが老化のはじまりで、寿命を決める要素であるかもしれない」と考える「細胞分裂有限説」が出てきた。
ヒトの内臓や皮層などを作っている細胞は、少しずつ新しい細胞に生まれ変わっているものの、ヒトの一生のあいだに50回もの更新が行われるとは限らない。
とくに脳を作っている神経細胞などは、もって生まれた細胞だけを一生のあいだ使う仕組みで、新しく作られることはないとされる。
しかしその一方で、免疫細胞などを含む血液のもとになる細胞(造血幹細胞)からは、ひっきりなしに新しい細胞が生産されている。
したがって、身体全体の細胞がいちどにダウンするわけではないが、たとえば免疫細胞や血管壁をつくっている細胞など、頻繁に分裂・生産を行っている細胞に″度数切れ現象″が次々と起こる。
その結果として免疫力が落ちれば、カゼをひきやすくなるといったように、病気にたいする抵抗力が下がってくる。
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